まだ肌寒さが残る3月1日、金沢美術工芸大学では、新校舎に移転してから初めての卒業式を迎えました。
式典に参加した卒業生、修了生は、例年通り、金沢美大の名物とも言われるさまざまな装いで、卒業式を盛り上げてくれました。
人気アニメやゲームのキャラクター、自身のあだ名を表したものから、石川県にゆかりのある食品など、さまざまな想いが込められた仮装に、式場に集まった先生方、保護者の方々、ご来賓の皆さまからは、自然と笑みがこぼれ、寒さに負けないあたたかな式となりました。
山崎学長は式辞にて、「本学での研鑽が、生きる力となり、人生の支えとなり、必ずや一人ひとりの未来が開かれると信じている。」と卒業生、修了生を送り出しました。
また、答辞では、卒業生を代表し、工芸科の石井さんが「今年の元日、非常に大きな困難が私たちを襲った。これから先もあらゆる困難が私たちを襲うだろう。それでも、それらの困難に向き合い続ければ、いつか報われる時が来るはず。」と1月1日に起きた能登半島地震についてや、自身の専攻している工芸科での学びを交えながら、卒業までの想いを述べました。
式が終わると、駆けつけた在学生が卒業生と共に写真撮影をしたり、美大祭や入学式を盛り上げてくれる本学のサンバ部が、軽快な音楽を、小立野に響かせてくれました。
本年度の卒業生の多くは、2020年にコロナ禍による影響で入学式が中止となり、翌年2021年4月に、改めて入学式を迎えた学生となります。先の見えない大きな不安に駆られながらも、主体的に制作、研究に取り組み、金沢美大を語り継いできました。
今回の卒業式も、卒業生一人ひとりが、エンターテイナーであり、表現者でした。日常を明るく、楽しく過ごそうと工夫して、表現する姿は、まさに金沢美術工芸大学の「手で考え、心でつくる。」モットーを大切にしてきた先輩方だからこそ、できたことなのではないでしょうか。
大学内だけでなく、日常生活でも後輩に優しくしてくださった先輩方のおかげで、私たち在学生も楽しく、有意義に大学生活を過ごせています。この金沢美大で受け継がれている伝統と、楽しむことの連鎖をこれからも絶やさず、後輩たちへと伝えていきたいです。
2月に行われた卒業・修了制作展 2024では、学部生、院生の集大成となる作品が展示されました。多くの地域の方々や、観光客の方々が足を運び、きらきらした表情で、作品を眺めておりました。私自身、先輩方の作品に込める想いと熱に押され、とても胸がいっぱいになりました。
作品には、私たち制作者だからこそ感じている、日々の空気や温度、におい、会話、食べたもの、見たものが、反映されます。制作者だからこそ感じられるものが、これからの制作の糧となり、励みになるのではないかと私は思います。今ある日常からヒントをもらいながら、その真っ直ぐなアツい思いで、これからも先輩方には、突き進んで欲しいです。そしてまた、私たち在学生も、その背中を追いかけ、少しでもより良い社会を築けるよう、ここ金沢美術工芸大学で学び、語り継ぐことを誓います。
改めて、ご卒業、ご修了、誠におめでとうございます。
卒業生、修了生の皆様が、どうか、笑顔で、あたたかい日常を過ごせることをお祈りしています。