インタビュー
2026.02.04

FACE / PLACE vol.1 ORUBA ー「人がおる」場所をつくる

聞き手・写真:方野公寛
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聞き手・写真:方野公寛

何かをしに行くわけでもなく、誰かになる必要もない。ただ、そこに居ていい場所。
「FACE/PLACE」は、そんな街の片隅にある文化芸術の現場を訪ねるシリーズです。主役は、活動する人の顔(FACE)と、その営みを支える場所(PLACE)。美術館やホールとは少し違う、日常の延長線上にある表現に目を向けます。
第1回目に訪れたのは、小さな休憩所、あるいは私設公民館のような場所「ORUBA」。管理人のなかむらくるみさん、スタッフの川端大晴さんとともに、この場所に流れる時間や空気について話を聞きました。

ORUBA 管理人 なかむらくるみ

ーー ORUBAとは、どんなところですか?

私はORUBA(おるば)の管理人をしている、なかむらくるみです。
ORUBAという名前の「ORU(おる)」は、「人が居る」「人がおる」という金沢弁からきています。「BA」は場所。つまりORUBAは、人がいる場所=おる場です。
ただ、それだけでは説明が足りないので、なぜ私がこのORUBAをつくろうと思ったのか、少しお話しします。
私は普段、身体表現を軸に活動するアーティストとして、15年ほど、知的障害や発達障害と共に生きている方々と身体を使った表現活動を続けてきました。
その活動の中で、県外のさまざまな場所に呼ばれ、ワークショップやパフォーマンスを行う機会がありました。
そこでは、子どもから年配の方まで、障害の有無に関わらず、さまざまな人が自然に交わり、同じ場に「いる」ことが当たり前のように起きていました。
それは仕事として続けてきたことですが、ある時ふと、「こうした場は、呼ばれた場所でしか生まれないのだろうか」「自分が拠点にしている町ではできないのだろうか」と考えるようになりました。
それが、ORUBAの発足の、いちばん根っこの部分です。

一階のリビング。冬の時期にはこたつが置かれ、思い思いの時間を過ごすことができます。


最初は、「何をする場所か」を決めるよりも、普段は出会わない人同士が、自然に、一人ひとりが“いる”ことのできる場所はつくれるのか、という自分自身の興味から始まりました。
その想いが、はっきりと形を持つきっかけになったのが、能登で起きた震災でした。
震災後、住み慣れた能登を離れ、金沢で暮らさざるを得なくなった人たちがいること、避難所や仮設住宅で、安心して過ごすことが難しい状況があることを、ニュースを通して知りました。
その時、私の中にあったORUBAの構想と、目の前の現実がつながりました。
私がこれまで主に関わってきたのは、知的障害と共に生きている方々でしたが、被災されたさまざまな年代の方、直接被災していなくても、金沢から能登を想い続けている人たちも、すべて「いろんな人」の中に含まれるのだと感じました。
私自身、子育てをしている中で、現地に足を運びたくても行けないもどかしさを感じることがあります。
そうした人たちも含めて、「いろんな人がおる場」を、今だからこそ金沢でつくれるのではないかと思い、ORUBAを始めました。
そのため、「ORUBAってどんな場所?」と聞かれると、今お話ししたような背景を、まるごとお伝えすることが多いです。

ORUBA スタッフ 川端大晴

ーー ORUBAでは、どんな活動・取り組みを行なっていますか?

ORUBAは、一見すると普通の町家です。少しだけ勇気を出して扉を開けると、実家のような、落ち着いた空間が広がっています。1階には9〜10畳ほどの大きな部屋とキッチンがあり、2階には小さな部屋が2部屋あります。
日中の11時から16時まで開いており、その時間帯は自由に過ごしていただけます。
1階の大きな部屋では、展示や販売を行っています。定期的にアーティストの展示を行っており、現在は珠洲焼の中島大河さんの作品を展示・販売しています。
また、カトトモコさんの写真作品をポストカードにしたものや、さまざまなアーティストの作品、日用品なども並び、自由に手に取っていただけます。本は、月替わりで「準備中書店」さんがセレクトしてくださっています。テーマが毎回変わるので、訪れるたびに違う本と出会えます。
キッチンでは、月に2回、輪島のパン屋「ラポール・デュ・パン」さんのパンが届くほか、県内外のお菓子も販売しています。購入したものを、その場で食べていただくこともできます。
2階も基本的に開放しており、静かに過ごしたい方は、ゆっくりと過ごしていただけます。

メインとなる和室の一角では、カトトモコさんのポストカードが展示・販売されていました。
床の間には、中島大河さんによる珠洲焼を展示。
大地を映し出したかのような深い黒と、豊かな風合いが魅力です。
気に入った作品があれば、購入することもできます。
準備中書店さんによる「月替わりの本棚」。
本のセレクトもコーディネートも個性的で、思わず手に取りたくなります。
まだ知らない情報や物語との出会いがあるかもしれません。
こたつで読書を楽しむ、そんな時間も素敵です。
月に2回、輪島のパン屋「ラポール・デュ・パン」さんからパンが届くほか、
県内外のお菓子も販売しています。

ーー まだORUBAに来たことがない方へメッセージをお願いします。

ORUBAでは、ダンスや音楽イベント、展示作家によるワークショップなども開催してきました。一方で、誰とも話さず、こたつに入って一人で過ごすこともできます。
パソコンやスマートフォンを開けば、どこにでもつながれる便利な時代ですが、生身の人と同じ場所にいて、言葉や体温を感じながら過ごすことは、とても大切で、愛おしいことだと感じています。
ORUBAは本当に小さな場所です。
だからこそ、スタッフと来られた方、偶然居合わせた人同士が交わす、ささやかな時間が積み重なっていけばいいなと思っています。
展示や表現も、大勢で観るのではなく、一人、あるいは少人数でじっくり味わう。そんな時間を、表現者としても、これからつくっていきたいと考えています。
動画を観て、気になる要素が一つでもあれば、ぜひ訪れてみてください。駅から徒歩9分ほどなので、県外の方も気軽に立ち寄っていただけたら嬉しいです。

2階の一室。ここに並ぶ服や小物は購入可能です。
「ひとことフリマ」という企画で、利用者から不要になった品が持ち込まれ、
元の持ち主がモノへの想いを値札にひとこと添えて販売しています。
実家のような落ち着いた空間。初めて訪れた方でも、どこか懐かしく、
初めてではないかのように気持ちが和らぐそうです。

ーー 今後のORUBAさんの展望をお聞かせください。

3月中旬には、金沢アートグミで、ORUBAの活動報告の会を予定しています。
珠洲焼の中島大河さんの作品販売(ご本人来場予定)や、珠洲で震災後も映像表現を続けているアーティスト・西海一沙さんによる上映とトークなどを予定しています。
堅苦しい会ではなく、美味しいものや、もしかしたらこたつも持ち込みながら、ゆったりとした時間をつくれたらと思っています。
ORUBAを知っている方も、初めての方も、ぜひ遊びに来てください。

FACE / PLACE vol.1 ORUBA ー「人がおる」場所をつくる

Information
ORUBA
ORUBAは、小さな休憩所、あるいは私設公民館のような場所です。
年齢や背景の異なる人たちが、それぞれ自分らしく、ゆったりと過ごせる居場所を目指しています。ときには会話が生まれ、違いをそのまま受け止め合う。理解できなくても、学んだり興味を持ったりできる。そんな空気感が、この小さな空間にはあります。スタッフも「店員」ではなく、一人の人としてここにいます。ひとりになりたい時も、誰かと過ごしたい時も、少し疲れた時も。ORUBAでひと息つき、自分の居場所として感じることができる場所です。

石川県金沢市瓢箪町2-6