コラム
2026.03.11

FACE/PLACE vol.3 金石町家(仮)屋根のある公園。ありのままの居場所

聞き手・写真:方野公寛(アーツカウンシル金沢ディレクター)
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聞き手・写真:方野公寛(アーツカウンシル金沢ディレクター)

目的がなくても、なんとなく来て、ここで出会った人と何かを見つける。見つからなくても過ごせる場所。
「FACE/PLACE」は、そんな街の片隅にある文化芸術の現場を訪ねるシリーズです。主役は、活動する人の顔(FACE)と、その営みを支える場所(PLACE)。美術館やホールとは少し違う、日常の延長線上にある表現に目を向けます。
今回は、子どもからお年寄りまで多様な世代がゆるやかに集う、「屋根のついた公園」のような居場所、金石にある「金石町家(仮)」を訪れました。オーナーの鶴山雄一さん、コミュニティデザイナーの門阪翔大さん、運営スタッフの南部沙希さん、徳田菜々香さんにお話を伺いました。

左から:徳田菜々香さん 門阪翔大さん 南部沙希さん 鶴山雄一さん 
YouTube「FACE / PLACE vol.3 金石町家(仮)」より。
撮影:前 伊知郎(PLUS FACTORY, Inc.)

屋根のある公園。ありのままの居場所

金石町家(仮)とはどんな施設ですか?

金石町家(仮)オーナー 鶴山雄一(以下鶴山):
この金石町家(仮)は、古い港町・金石において、お年寄りからお子さんまでが交流できる場所として提供しています。子どもたちは本当に元気で、お年寄りや専門性を持った大人の方と交流しながら学びの機会が生まれています。笑顔があふれている空間だと感じていますし、一方で金石らしく、ゆっくりと自分らしく過ごしている人が多い場所でもあります。ここに来れば発見や気づき、楽しさがある、そんなふうに感じてもらえたらと思っています。

金石町家(仮)コミュニティデザイナー 門阪翔大(以下門阪):
地域の子どもたちだけでなく、いろんな職種、立場の方がふらっと立ち寄ります。特に目的がなくても交流が生まれて、何か元気をもらって帰っていく。お年寄りにとっても、いい場所なんじゃないかと思います。

金石町家(仮)運営スタッフ 南部沙希(以下南部):
子どもも大人もお年寄りも、すごくありのままに過ごしているなと感じます。自分を偽らず、そのままでいられる場所だと思います。

金石町家(仮)運営スタッフ 徳田菜々香(以下徳田):
子どもたちが友達と遊びに来たり、近所の方がお茶を飲みに来たり。本当に人それぞれのゆったりした時間を気軽に過ごせる場所です。リビングで大人が作業していると、子どもが「何を作っているの?」と話しかける。自然に大人と子どもが交流できる場所だと思います。

鶴山:「屋根のついた公園」とも言われますね。公民館や学童とは違って、子どもたちがゲームをするのではなく、自分たちで何かをやってみたり、普段やらないことに挑戦してみたりする場所。子どもたちが「どう思う?」と問いかけられながら考える。スイーツクラブも楽しそうに活動していますし、問いを持ち、自分の考えを出すことを大事にしています。

門阪:この場所がどういうところかを表現しながら、毎日いろんな人が楽しめるコンテンツをつくりたいと思っています。自分で問いを持ち、学校では教わらないようなことを考え、表現してみる。《Question&Think(くえすちょん・あんど・しんく)》という取り組みもその一つです。SNSでも発信しています。

鶴山:SNSを通じて町の外にも伝わっていますし、話している途中でも近所の方が入ってくる。本当にいろんな人が来る場所だと感じています。

《Question&Think》は、自分で問いを持ち、学校では教わらないようなことを考え表現してみるコンテンツ。
生活の中で感じた疑問を白い紙に書いて貼り、そこに対する思いや考えを茶色い紙で自由に返す参加型のコンテンツ。学校では扱わないような問いが多く並ぶ。

やりたいことがカタチになる

金石町家(仮)では、どんな活動、どんな取り組みをしていますか?

門阪:主な使い方は「屋根のある公園」。ただ来て、ただ過ごすだけでも大丈夫です。セルフサービスの飲食もあり、気軽に立ち寄れます。学びをテーマにしたコンテンツも多く用意しています。
象徴的なのは「マチヤちゃれんじ」。やりたいことを書き出すことで、「一緒にやりたい」「手伝えるよ」と交流が生まれる掲示板です。部屋のレンタルもあり、教室や講座、お茶会などにも使われています。マチヤマルシェのように、利用者さんのやりたいことが集まって生まれるイベントもあります。
中央の大きなキッチンは、みんなで囲めるつくりになっています。ここから「一緒に料理をしてみたい」という気持ちが生まれます。
小学生が立ち上げたスイーツクラブでは、デザインや広報、お金の管理まで大人に教わりながら、自分たちでイベントを企画し、最後までやり遂げました。金石町家(仮)らしい取り組みだったと思います。
金石町家(仮)は「学びと交換」がテーマです。世代を越えて学び合い、学ぶ姿勢そのものを交換できる場所にしたいと思っています。目的がなくても、なんとなく来て、ここで出会った人と何かを見つける。見つからなくても過ごせる場所です。

《マチヤちゃれんじ》は、やりたいことを書き出すことで、「一緒にやりたい」「手伝えるよ」といった交流が生まれる掲示板。
《マチヤマルシェ》ワークショップの様子
小学生が自発的に立ち上げた企画《スイーツクラブ》。デザインや広報、お金の管理まで大人に教わりながら、自分たちでイベントを企画し、最後までやり遂げました。金石町家(仮)らしい取り組みです。
撮影に訪れた日は建築の展示が行われていました。ここでは一年を通して、さまざまな展示や活動が行われています。
午後3時頃から、学校帰りの近隣の子どもたちが集まってきます。絵を描いたり、宿題をしたり、友達とおしゃべりをしたり。思い思いの時間を過ごす、心地よい居場所になっています。
ライブラリスペースがあります。本は金石町家(仮)を応援する方々の寄付によって少しずつ増えています。落ち着いた空間で、読書に最適な場所です。

金石の未来と金石町家(仮)のこれから

金石町家(仮)のこれからの展望をお聞かせください

鶴山:(仮)とある通り、今が完成形ではありません。人との出会いによって、やれることは増えていくと思っています。建築やまちづくり、子ども向けのワークショップなど、学びをテーマにした取り組みを増やしていきたい。次の世代に向けて、子どもたちの可能性を広げることを大事にしたいです。

門阪:ここがあったから生まれた仕事のつながりやクラブ活動をたくさん見てきました。それがもっと広がっていけばいいなと思います。

南部:ここでいろんな方と話す中で、自分自身もチャレンジしてみようと思えるようになりました。新しいことを一緒に実現できる場所であったらうれしいです。

徳田:子どもも大人も、何かにチャレンジしている人が集まる場所だと思います。子どもが「やってみたい」と言ったときに、私たちが応援できる場所でありたい。もっと子どもたちが積極的に挑戦できる場所にしていきたいです。

鶴山:誰かに言われてではなく、自分がこうしてみたいという気持ちを持つこと。それを応援できる大人がいること。みんなが少しずつ良くなっていく、そんな場所であればいいと思っています。

それぞれの部屋はレンタル利用が可能で、教室や講座、お茶会など、さまざまな用途に使われています。
子どものそばで大人が仕事や作業をしていたり、世代を超えた交流が生まれたりしています。目的がなくてもふらりと訪れ、人と出会い、何かを見つける。見つからなくても過ごせる場所です。
建物の壁面には黒板があり、お知らせが書かれています。夢や目標を書く人もいて、未来への想いが感じられます。目的があっても、なくても、金石町家(仮)にふらりと足を運んでみてはいかがでしょうか。

YouTube動画でもご視聴いただけます

FACE/PLACE vol.3 金石町家(仮)屋根のある公園。ありのままの居場所

Information
金石町家(仮)
「金石町家(仮)」は、100年以上まちを見守ってきた町家をひらいた、“なにをしてもいい、なにもしなくてもいい”居場所です。お店でも公民館でもなく、理由なく立ち寄れる入館無料の空間。ばったり出会い、ゆるやかに語らい、ときに挑戦し、学び合う。多様性を前提に、多世代が交わりながら、金石のこれからをともに探していく拠点です。現在“ゆるっと”オープン中。
金沢市金石西1-27-13
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