1998年 金沢美術工芸大学 油絵専攻を卒業。はがきサイズの油彩画、立体的な素材を組み合わせたアッサンブラージュを制作する。日常生活つまり現実世界では見ることのできない存在や、理解を超える不思議な現象を研究テーマとしている。2003年 オランダでの滞在を契機に作品のスタイルを確立し、国内外で発表を行う。2005年 コマーシャルギャラリーに所属、アートフェアなど国際的なショーに数多く参加。2013年 ギャラリーTHE ROOM BELOWを立ち上げアウトサイダーアーティストを中心に紹介、アートの可能性を広げる多様な試みを積極的に行っている。
活動
絵画、彫刻の制作
幼稚園やこども園での創作活動支援
福祉施設や医療施設での創作活動支援
アートギャラリーの運営
創造性とその根源についての研究、執筆
私が活動へ向ける情熱と信念は、幼稚園やこども園で出会った子供たち、福祉施設で生活を送る方々との交流によって形づけられました。子供たちと一緒に長い時間を過ごしていると、大人と全く違った視野と世界観を持っていることに驚かされます。彼ら彼女らは、言葉ではなく振る舞いや表現で「”今日”という日は誰にとっても初めての日で、新鮮であり不思議なんだ」という真実を私たちに思い起こさせてくれます。社会が求める形式から自由で、明日を作るためのアイデアと希望に満ちる子供たちに、私は多くのことを日々学んでいます。福祉・医療施設での交流はいろいろな意味で刺激的です。ある方との出会いを紹介したいと思います。彼は欄間や仏壇を作る木彫職人として働いていましたが、ある日脳梗塞で倒れ脳に障害を負うことになりました。そして、病気の苦しみと向き合う中から新しいビジョン(世界)を見つけ絵を描き始めたのです。制約のある小さな部屋、病室のベットの上で密かに描き続けた絵は、妄想と現代の神話が折り重なっているかのように見えました。長きにわたる彼との親密な交友から、私は、彼の現実に対する認識を自分たちの文化にむりやり押し込めるのを止め、それがすばらしい世界の1つであると認められるようになりました。こうした経験の積み重ねは、世界にまだ謎が残っており、それは美しいことを少しずつあらわにしていきました。文化や地理といった外的要因だけではなく、精神世界の境界をも越える対話の中に、私は制作のテーマを見つけました。
テーマ
意識することのできない透明な物質、無言の声、真空の匂いは確かに存在します。誰もその形を記憶にとどめておくことはできないのだが、それらは、山頂から見る朝日、黄昏時の海、夢の中などで姿を表します。その目撃者となった者は、全ての感情を剥奪され、包み込む暖かな宇宙の体温に触れることになるでしょう。この現象は、目に見えるものだけが真実だという幻想を払拭してくれます。そして、あらゆる種類の強制や諦めから解放されようとする意志も、ここから生まれて来ると考えます。私はこれら透明な物質、無言の声、真空の匂いを絵画や彫刻でなんとか視覚化し、この不思議な現象を作品と鑑賞者との間にも成立させたいと試みています。
学童(放課後児童クラブ)で行った創作活動支援の様子