インタビュー
2024.09.04

移転オープン・「SKLo gallery」インタビュー|時代と街に融け込み、生み出しつづける作品との出会い

「SKLO」(スクロ)と言えば、知る人ぞ知る香林坊・せせらぎ通りの裏にあるアンティークショップ。イメージはそのままに、その3軒隣にあったギャラリーとしての「SKLo」が、2024年の8月に金沢市尾張町に移転した。突然のSNSでの告知に目を丸くした人も少なくないだろう。今回オーナーである塚本美樹さんに、心機一転の意図を尋ねた。

──移転オープン、おめでとうございます。このマガジンでは新しく出来たギャラリーを紹介していて、今日は初めてSKLoを知る方のためにも、これまでのことも含めてお話しいただきたいなと思っています。まずはすごく基本的な質問で申し訳ないのですが、「SKLO」という店名の由来を教えていただけますか?

直訳するとチェコ語で「ガラス」です。英語ではないので一見どういう意味かわからないところに魅力を感じていて、新しいカテゴリというか、自分たちが新しいイメージをつくっていきたいという意味合いがあります。アンティークショップの店名は全部大文字の「SKLO」、ギャラリーは最後のOだけが小文字になっていて…ギャラリーの名前は始めるときに結構考えたんですが、何を出してもしっくりこなくて。新しい名前にすると全く新しいものをゼロから作る感じになってしまって、今までやってきたことをそのままそこに出すだけで良いと思っていたし、結局自分の頭の中でアンティークのものも作家さんの作品もあまり分かれていないというか、同じように考えて、扱ってるんですね。そこでギャラリーを全く違う名前にする方が無理があったので、呼び方を同じにすることでスッキリしました。

香林坊にある「SKLO room accessories」

──今更の質問で失礼しました笑。アンティークショップの「SKLO room accessories」は、オープンしてどのくらいですか?

いえいえ、聞かれないと伝えられないので、改めて言えるのはすごく助かります笑。
アンティークショップ自体は、もう20年くらいになります。最初は犀川沿いの店舗で開業して、その5年後くらいに今の香林坊の3階建ての建物に移転しました。移転と同時にその3階のスペースでひっそりとギャラリーも始めて。そこで最初に展示したのが、金沢市内で陶芸をしている中田雄一さんでしたね。そのあと、ギャラリーを3軒隣の物件に移転して「SKLo」として始めたのは2018年の末くらいで、そのあとコロナになって…という感じです。

──SKLOが香林坊にあるということは結構イメージが定着していたと思うんですが、今回アンティークショップを残してギャラリーを移転したのは、何かきっかけがあったんですか?

きっかけは色々あるんですが、一つはコロナ禍を挟んで時代がすごく変わったような気がしたことです。それまでは毎月のように企画展を開催していたので、あの空間でどういう風に展覧会ができるのかというのはある程度やり尽くした感じがしていました。そんな中でコロナ禍になり、それが明けてからもう一度同じような内容をここでやろうかと思っても、なかなかそういうテンションにならなかったんです。一つの時代が終わって次の時代になったような気がして、新しくそこで企画展をすることにあまり魅力を感じなくなってしまったというのがあります。

現在のSKLoの場所は、元は四知堂の屋台スペースとして使用されていた。

その頃、自分が2020年から経営を始めたこの尾張町の台湾料理屋「四知堂」の中で屋台スペースとして使っていたこの通り沿いの空間が、そこもまた一つのフェーズを一旦終えて何か別のことをそこでやろうかというタイミングを迎えていたので、思い切ってギャラリーをそこに移すことにしました。

空間としてはコンクリートでRC構造の旧SKLoから、天井も床も壁も木で囲まれた町家という全く違う場所に変わる。実はそこにすごく面白みを感じていて、また違った切り口というか新しい景色がつくれるんじゃないかなということで、結構ワクワクしています。

──展示の内容も、これから変わっていきますか?

わりと人も車も多く通る賑やかな場所、という特性があるので、多くの方の目に出来るだけたくさん触れていただけるような機会を作れればと思っていて、常設展を中心として作品を常に見てもらえる状況を整えたいです。まずは今までお世話になった作家さん、SKLoでこれまで一緒に展示をつくってきた作家さんの作品を今一度紹介します。そこからスタートして今後新たな作家さんとの出会いがあったらまた一緒に展覧会を考えていけたらと思っていて、3〜4ヶ月に1回くらいのペースで定期的に企画展を開催したいですね。

また、前のスペースもそうですが、ここもホワイトキューブではないというところが特徴なのかなと思っていて。周りの環境と一緒に見るというか、その環境に落とし込まれた時にどう見えるのかという視点が個人的にはすごく好きなんです。「作品だけを見る」というのも良いなと思うんだけど、環境の中に作品があるという状況、それはそれでとても良いなと思っています。

そういう環境の中で展示することで、見え方の新しい発見があったり、作品の新たな一面が見えたというのはよく作家さんに言われます。造作した壁を立てて仕切ったり、展示台をつくったりとその都度空間を変える必要が出てくるので、結構大変なところもあるんですが、でも作り上げることにはやっぱり満足感があるなあと。

──より良い見せ方があるんじゃないか…という試行錯誤は続けていきたいですよね。

あとお客さんが、意外と金沢という場所に作品を見に来ることや「素敵なものとの出会い」みたいなものを求めている気がすごくします。観光の方や来店するお客さんの様子を見ていると、観光のために金沢に来るという選択の中にそういう気持ちが結構なウエイトを占めていて、求められてるなという。だから大通り沿いの人目につきやすいこの場所で、ちゃんと出会わせてあげたいんですね。
アンティークは若干ひねくれが入っていて笑、出来るだけわからないようにするというか、ハードルを設けて入りにくくするというのを意図的にやっています。アンティークには興味がない人も結構いて、そういう人にすごく入りやすい状況を用意してしまうとお互いにつらくなると思うんです。だからある程度敷居が必要だと思っていて、今のような裏路地がすごく合っていると思います。
一方で、ギャラリーは表に出て、求めているお客さんに「どうぞ出会ってください」というふうにしたいなと。

──確かに人通りもあるし、観光客も多くて今はいろんな国籍の人が行き来していますよね。

また、街の風景の一部になりたいという気持ちもあります。夜に前を通ったとき明かりがついていて作品が見えると、翌日の営業時間中に訪れてもらうこともできますし、金沢という街の印象にもすごく貢献できるんじゃないかと。シャッターを閉めて全く中を見えなくするよりも、チラッと窓から覗いてもらえるだけで奥行きや雰囲気がある街になりますよね。香林坊でもそうで、真っ暗にはせず少しだけ明かりをつけて、魅力的な街の一部になれたら良いなと思っています。

──なるほど。歩道の幅が広くなっていて軒先も出ているので、立ち止まる人がすごく多いですね。

入り口は大きなガラス戸で間口が広いですからね。二度見、三度見はすると思います。何気なく歩いていてふと覗くと、一瞬頭が追いつかなくて「なんだここは」みたいな笑。店の前は歩道も含めると実は車1台入るくらいのスペースがあるので、雨や雪の日は軒下に入る人が多いです。ゆくゆくは金沢市が、この歩道の路面を温めるロードヒーターをつけるような工事をやって足で歩ける町にしようとしているらしくて、これからどんどんよくなると思います。

──それにともなって、街もお店もにぎわっていきそうですね。今後の盛り上がりがとても楽しみです。今日はお話いただきありがとうございました。

(2024年8月、聞き手・編集:金谷亜祐美)

Information
SKLo gallery
ジャンル、世代、地域を問わず、
私たちが出会い、その考えや生き方に共感する人々、
彼らの手から生み出されるもの。
〒920-0902
金沢市尾張町2-11-24
Tel. 076-224-6785
Mail. sklo_gallery@icloud.com
Profile
塚本美樹(つかもと・よしき)
1975年石川県生まれ。2005年に石川県金沢市の犀川沿いにアンティークショップ「SKLO room accessories」を開業。出身である津幡町で農業を営みながら、2018年にギャラリー「SKLo」、2020年に台湾料理のレストラン「四知堂kanazawa」、2021年にホテル・香林居内に「karch」を開店。無農薬の黒米の栽培から、展覧会やイベントなどの企画・開催や空間のスタイリングなまで様々な活動や店舗の運営を手がけている。
1975年石川県生まれ。2005年に石川県金沢市の犀川沿いにアンティークショップ「SKLO room accessories」を開業。出身である津幡町で農業を営みながら、2018年にギャラリー「SKLo」、2020年に台湾料理のレストラン「四知堂kanazawa」、2021年にホテル・香林居内に「karch」を開店。無農薬の黒米の栽培から、展覧会やイベントなどの企画・開催や空間のスタイリングなまで様々な活動や店舗の運営を手がけている。