リレーコラム
2023.08.19

リレーコラム「考える金沢人」第2回──メールを転送します/遠藤茜

『考える金沢人』第3弾!!

「その時々に思っていること、考えていることをフランクに、リアルに、友達に語るように、バトンリレー式につぶやいてゆくコラム」として、前回の菊谷達史さんから引き継ぎ、漆作家の遠藤茜さんに知人にメールを打つ感覚で執筆いただきました。

メールを転送します:

近況報告

[from] Akane Endo

[to] K

[date]2023.6.XX 00:49


お疲れさまです!遠藤茜です。

連絡が遅くなってしまってすみません。

この間はどうもありがとうございました。そういえば全く自己紹介をしていなかったです。

私は地元は岡山で、大学進学と同時に金沢へやってきたのですが、卒業した後もそのまま金沢に住んでいます。卒業したあとはすぐに就職したんですが、今も作家活動は細々と続けています。

最近はほとんどのものがそうだけど、漆も毎年値上がりしているし、ほんとやってらんないです。でもなぜか今まで続いていますね。もうちょっとやりたいことがあるっていう感じかな?たまに思いついた時に公募展とかちょいちょい出してますけど全然通らない笑 学校を出た後も作品を作り続けるって本当に難しいことなんだなと実感します。

金沢は漆やるにはすごくいいと思います。住民の皆さんの工芸リテラシーの高さはもちろんのこと、岡山帰ると唇がパサパサになるので、湿度の高い金沢はやはり漆やるのに向いているなと体感します。あとは作家も多いので、お互いに頼っている。漆やっている人は皆親戚みたいになっています。

しかし春は気温も上がり下がりが激しくて体の調整が難しいです。体調などは崩されていませんでしたか。私はこの春は体調がガタガタでほんとにだめでした!笑 肌荒れと自律神経の乱れで、お腹の調子も悪くて。でも最近は気候もメンタルも安定してきたので元気です。それと、この春からヤクルトを飲み始めましたが、あれはいいですね。1000じゃないですけど、充分です。

もうそろそろ夏ですね。昨年からですけど、夏のお弁当といえば、私はサラダなんです。そういえばちょうどコロナ期だったあたりに、ヴィーガン食を始めた友達がいたんです。その子のおかげで少しヴィーガンについて興味を持って、調べたりし始めてから、野菜を意識して食べるようになりました。

自分の言葉とか制作とかで意思表示する人はよく知っていたけど、食とか消費することにおいて意思表示できるということにはそれまで気づけなかったので、大きな発見でした。(しかも無駄な欲求を抑えられそうなので節約につながるのではという発見もありました。)

ヴィーガン食は肉・魚・乳製品・卵とかとにかく動物性食品を断つというものなのですが、これはすごい思想だなと思いました。なにがすごいかというと…多分、始めるきっかけは人それぞれだと思うのですが(環境保護か、動物愛護の視点が多いと思います)、その人の精神衛生を保つために存在するというか、その人にとって最も心も体も健康になるための手段という感じが(違ったらすみません)。

多分人1人がヴィーガン食をやったとしても特に世界には変わりないのかもしれないんですが、その人の世界は完全に守られているみたいな。基本的に作品を作る時もそんな感じがしませんか?私にはなんか近い感じがするのですが。

ヴィーガン食を知ってから野菜を積極的に食べるようになったのですが、やはり時期によってはスーパーで売っていない野菜もあるということに気づくことができました(当たり前すぎる)。それまで食に無関心だったので、いつも同じものを買っていたような気がします。でも野菜ばかり見るようになって、その時安いこれが旬なんだ!とか、逆に食べたいのにこれがない…いまは旬じゃないのか、とかも分かるようになりました。それと、旬な野菜はその時期めちゃくちゃ採れているんだから、その時期に食べるのが一番じゃないですか。でも人間は何日も同じものを食べるのは難しい。飽きちゃうので。で結局食べたいものを好きな時に食べれるようにいろんなものがスーパー・コンビニには売ってますよね。でもこれってなんて贅沢なことなんだろうと思い、野菜に関してだけでなく、好きなものを好きな時に食べられること、コンビニエンスなことって普通じゃない=異常なことなんだよなあと思えるようにもなりました。便利すぎることに対して、なにかが変だって思うようになりました。まあでもアイス食べたいし、オムライス食べたいし、焼きそば食べたいって思うし、そんな時はもちろん作ったり買ったりするのですが。人は一度便利で楽なことを味わうと、なかなか不便な時には戻れないですね。

ヴィーガン食について、調べたのは調べたんですが、私は肉も魚も食べることにしています。特に意味があるわけではないのですが、結果的に自分が幸福だと感じるのは何でも食べられることだなあと思ったからです。ただ他のものよりも少しだけ野菜が好きというそれぐらいです。

ただ!今、ビーガン食すごく発展してて面白いんですよ。新しい食体験ができるので、私はすごく好きです。

豆乳マヨネーズとか食べたことありますか?美味しいですよ。なんならマヨネーズ苦手な人でも食べれるのではという美味しさです。あとはお肉とかも代替品があったりして。私はひき肉とか鶏肉の大豆ミートを食べたことがありますが、大豆ってうまみが多いんだなと実感するぐらい、「うまみ」の味がします。肉とは少し違うかもしれませんが。

あと私はヴィーガンではないですが、ミートフリーマンデー的なものは推奨していきたいなと思っていて。つまり週1日だけ動物性食品を取らないという取り組みです。先にも述べたようにヴィーガン食は比較的内向きな行為ではありますが、これを曜日にあてがって外向きに発信できる取り組みにすることで、1人ではなくみんなで行い、少しでも社会的に意味のある行為にしようということだと思います。それが、私の場合だと平日のランチだけサラダにするという笑 オリジナルの取り組みに変換してます。ただ、サラダにウインナーとかゆで卵入れちゃう時もあります。というかそういう日の方が多いです。でもメインはサラダだし、平日は5日あるので。ミートフリーマンデーとだいたいトントンなのではとか勝手に思って自由に頂いてます。あ、写真はよく作ってるお弁当です。これに白米を別添えで持っていってます。

まあ自分が食べるものなので、自分がいいならそれでいいんです。ヴィーガン始める人も最初そんな感じだと思うんですよね。どうしても動物性のものが食べたい時とか、動物性が入ってるものしかない時とかあると思うんです。そのために代替肉があるんですよね。

ヴィーガンのくせに代替肉まで作って、結局肉食べたいんじゃんって思われることあると思うんですけど、それだけじゃなくて、多分、その代替肉は食べるということ自体に何かしら意識を持っている人たちを救ってると思います。ヴィーガンしかり、ダイエッターしかり。ほんと、代替肉様様です。

まあ難しい話はさておき夏はやっぱり体温も上がるので冷たいサラダを食べてクールダウンするのが良いです。夏野菜はめちゃくちゃ美味しいし。食欲なくても食べれるし、調理にフライパンとかもいらないし、盛り付けも適当でいい。いやこれはもはや食に興味ない人間の発想ですね!笑 ついでに環境負荷も少なくできるなんて最高ですよ。

ちなみに今年は庭で野菜を育ててます。サラダに入れられる日が来るといいなー。

結局食べ物の話で終わってしまいました、笑

ではまた、美味しい話があれば聞かせてください。

遠藤茜

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サラダの話

[from] Akane Endo

[to] K

[date]2023.6.XX 22:00

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お疲れ様です。遠藤茜です。

そうなんですよ!私朝からお弁当作ってるんです。

夜ご飯の残りがあればそれを持っていくんですが、無い時は基本サラダかなあ。あとはうどんとか。

お腹は空きますよ。。!グミとかガムとか食べてしのいでます。帰りにスーパー寄ってお菓子買っちゃうときもあります。こんなことしてたら結局カロリーも環境配慮もプラマイゼロですよね。。笑

庭の野菜は、プランター栽培でミニトマトとなすびときゅうりを育てています。なすびの葉っぱが無茶苦茶デカくなるので日々驚いてます。(なんか調べたら窒素過多らしいじゃないですか!)

最近少しずつ実が大きくなってきて、食べられるのが待ち遠しいです。毎朝起きてすぐに土の湿り気を見たり、わき芽が生えてないか確認するのが楽しいです。ていうか毎日変化してて、すごいスピードで成長するのが面白い。私はもう大人になってしまったので自分の身体の変化はほとんどなくなってしまったし、その代わりに野菜たちが毎日私の分まで成長してくれている感があって、謎に安心します。土に栄養を与えると、次の日、より顕著に元気なんです。

土といえば、実は私1年半ほど前からコンポストというものをやっています。コンポストご存じですか。

例えば野菜を切った時に出る皮とかヘタの部分とか、普通生ごみとして捨てると思うんですが、それを堆肥に変えられるという革命的なものです。いや、私にとっては革命だったのですが、昔はそれこそ庭に埋めたりしてたんでしょうね。ごみ処理技術が上がって「生ごみ」として焼却されるようになった今改めてごみの量が問題になってしまい、また昔の生活に回帰するような感じでしょうか。

コンポスト含めて、だいたいこういうエシカルな取り組みって基本的にお金かかるイメージあったので、少し始める前不安だったのですが、当時はいろいろ環境について気にしてた時期だったのでやらないで批判するではなく、やって批判せねばだ!(展覧会も、観に行かないと批判もできない!の精神で行くので)と思って始めて、そのまま1年半継続中です。

これ、続けられてる1番の理由はもちろん倫理的なところですけど、同じぐらいでかい理由として家計にも優しいからというのがあります。というのも、心配していた経済的な面も、初期投資さえしてしまえば、あとはほとんどお金がかかりませんでした。これは嬉しい誤算でしたね。

例えば1日約100gの生ごみが出るとして、それを1ヶ月コンポストに入れると約3kg分のごみ袋が不要になります。1年続ければ約36kg。これが何世帯もあればその世帯分。これ結構すごい話だと思います。私今2人暮らしをしているのですが、確実にごみの量は他の家より少ないと感じます。1週間に10Lのごみ袋1枚で済んでいますから。。

コンポストは箱(もしくは不織布カバン)と基材と呼ばれるものがあればできるのですが、私の家には生ごみを入れる用と、熟成用で2つあります。というのも、生ごみを入れ続けるだけでなく、生ごみを入れないで熟成させることで堆肥になっていくので、熟成用も必要なのです。始めた当初は生ごみを入れ続けて、これは一体いつ止めればいいんだ…!?と思っていました。。笑

写真は生ゴミを入れ続けてるコンポストの様子です。入れものの不織布のカバンみたいなのは、初めにネット通販で買ったもので、通気性はあるけど匂いは出ないので重宝しています。なので室内でやってます。コンポストの基材は加工されたもみがらと炭だったかな。これに生ゴミと一定の量のお水を入れてかき混ぜることで、微生物に分解してもらえます。

不織布のカバンには3ヶ月ほど生ごみを投入し続けます。その後段ボールに移して野外において熟成させています。熟成したコンポストは、段ボールごとほがらか村とかに持っていくと新しい基材と段ボールと交換できるので、お金は入りません。またもらった段ボールは、熟成用としてとっておいて、不織布のカバンで分解していたものを段ボールに移して熟成。熟成させたら段ボールごとほがらか村へという繰り返し。自分の中ではとてもいいサイクルになってきています。熟成用の段ボールの写真、夜に撮ったので。暗くてすみません。放置してるっぽいですが、たまにかき混ぜて空気を入れてます。

回収されたコンポストは、農家さんで堆肥化して利用されてるみたいです。このシステム、結構信頼の元に成り立ってることなので(使用者がちゃんと分解できるものだけコンポストに入れてくれているという信頼と、農家さんが堆肥として使ってくれるという信頼)なかなか全市民が利用するのは難しいと思うのですが、まずやってみるのも手だと思います。

金沢市のHPの金沢市ごみ処理基本計画をみると、家庭ごみの約4割が生ごみらしいですよ。確かに、生ごみを堆肥化して、プラごみや紙ごみを資源として回収してもらうと、本当に残るのは汚れたティッシュとかレシートとかぐらいになるんですよ。それでうちはごみの量少ないんだと思います。

金沢市は段ボールとコンポスト基材を無料で交換してくれたり、もし生ごみ処理機など買う場合は補助金がでたりなど、ゴミを減らすことに結構力入れているように思います。(ベジタくる〜ん)

金沢市の回し者みたいになっていますが…ただ、良い取り組みだなと思って利用しています。現にこれのおかげで続けられているので。。

コンポストは植物を育てるのとほぼ同じだと思っています。かき混ぜて酸素を入れて、水をあげて、生ゴミを投入する。毎日じゃなくて2、3日にいっぺんでも大丈夫です。キッチンに生ゴミがたまらないので夏も衛生的です。なんかエコシステムの中に自分がいるなという感じもしてくるので、いろんなことへの罪悪感が薄れます。

本当はこれで庭の野菜も育てたいんですが。次のステップはそれですね。

前回のサラダの話から、今回はコンポストのプレゼンをしてしまいました。やっぱコロナ禍はよほど暇だったんでしょうね、当時めちゃくちゃごみについて調べるのにはまっていて。金沢市ごみ処理基本計画書もそうですが、自分が出したごみがどうなっているのか、資源ごみって本当に資源として活用されているのかとか、調べるの面白いのでおすすめです。そのうちごみ処理場とか、埋め立て場所とか、下水処理場とかの見学ツアーみたいなのしたいですね。企てようかな。

とにかく、長文ですみません。ここまで読んでくださってありがとうございます。またお会いしたときに他にも色々お話ししたいです。それではご体調に気をつけてお過ごしくださいね。

遠藤茜

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(2023/6月 次回はお友達でもあるアーティストの西島夏海さんへバトンを渡します。)

Profile
漆作家
遠藤 茜(えんどうあかね)
1997年岡山県生まれ。2022年金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科工芸専攻を修了。手芸・シールなどの日常的で身近な素材と、非日常的な素材である漆を組み合わせ、誰もが感じる正しさや当たり前にあることについて問うような作品を制作しています。近年の展示にグループ展「漆表現の現在」(日本橋高島屋美術画廊X/東京/2023)、個展「WHAT CAN I PROTECT ?」(ArtShop月映/石川/2022)、「KUMA EXHIBITION 2022」(ANB Tokyo/東京/2022)、「正新の時2022-漆芸の未来を拓く-」(石川県輪島漆芸美術館/石川/2022)など。
1997年岡山県生まれ。2022年金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科工芸専攻を修了。手芸・シールなどの日常的で身近な素材と、非日常的な素材である漆を組み合わせ、誰もが感じる正しさや当たり前にあることについて問うような作品を制作しています。近年の展示にグループ展「漆表現の現在」(日本橋高島屋美術画廊X/東京/2023)、個展「WHAT CAN I PROTECT ?」(ArtShop月映/石川/2022)、「KUMA EXHIBITION 2022」(ANB Tokyo/東京/2022)、「正新の時2022-漆芸の未来を拓く-」(石川県輪島漆芸美術館/石川/2022)など。